ゲーム概要
ゲーム名 | Balatro(バラトロ) |
ジャンル | ローグライクデッキ構築、カードゲーム、デッキ編集 |
プレイ人数 | 1人 |
プレイ時間目安 | 1プレイ40分~1時間程度 |
販売形態 | Nintendo Switch、PlayStation、Steam、Xbox Series X/Sなど |
価格 | 1700円 |
日本語化の有無 | 公式で日本語対応済み タイトル画面から変更する必要あり |
参考URL | Google Play https://play.google.com/store/apps/details?id=com.playstack.balatro.android&hl=ja&pli=1 Steam https://store.steampowered.com/app/2379780/Balatro/?l=japanese |
一口メモ | ポーカーにローグライク要素を盛りつけたトランプゲーム |
公式PV
はじめに
今回紹介するのはThe Game Awards 2024にもノミネートされたポーカー風ローグライクゲームであるBalatroです。
カードゲーム風のローグライクゲームというと、基本デッキが存在し、道中で様々なカードや遺物(装備)を集め、様々な敵を倒していく様子が想起されるかと思いますが、本作の場合は、デッキ構築要素や装備集め要素はある一方で、あくまで敵はおらず、ポーカーの役を作りながら、目標スコアを規定ターンまでに目指すタイプのゲームとなっています。
ローグライクのゲームらしく、デッキ構築や手札の切り方で色々と考える要素がある一方で、1プレイにかかる時間は比較的短めであり、手軽に遊べるゲーム性が特徴となっています。そのためトランプゲームという事もあり、かつてはPCにデフォルトで搭載されていたソリティアを遊んでいる時のような感覚になります。
ゲームのルール
Ⅰ:基本ルール
まず本作の基本ルール自体はポーカーのままです。プレイヤーは、ドローしたカードの中から最大5枚までカードを選んで役を作り、役に応じてスコアが貰える形式になっています。チップの枚数×倍率で最終スコアが決定されるのですが、難しい役になれば成程、チップの枚数や倍率が高くなる仕組みになっています。例えば同じ数字のカードを2枚揃えるワンペアの場合、10枚×2倍となりますが、同じ数字のカードを4枚揃えるフォーカードの場合、60枚×7倍になります。
また役として成立したカードの数字に応じて、チップが加算されるようになります。A(エース・1)が最大で、その後にK(キング・13)などが続き、最小は2となっています。
これを繰り返して、目標スコアを超える事がこのゲームの主目的です。ハンド数が限界ターンとして設定されており、例えば初期ハンド4ならば、4ターン以内に目標スコアを超えられなければゲームオーバーになります。またハンドとは別にディスカードといって、手札を交換出来る要素もあり、初期ディスカードが4ならば、好きなタイミングで4回までカードを交換する事が出来ます。
↑Balatro要素が殆ど何もない状態でのプレイ映像
ディスカード(手札交換)を駆使しながら役を揃えていく
これだけ見ればほぼポーカーゲームである
Ⅱ:ジョーカーによる強化
目標スコアは、達成すればするほど上昇していくのですが、このままでは役を作るだけでは対応出来ない事になります。ここで活躍するのがジョーカーや各種強化要素です。目標スコアを達成すると、ショップ画面に移行し、ここでジョーカーカードを購入したり色々と強化する事が可能です。
一般的にポーカーのジョーカーは、どんなカードにもなれる万能札として扱われますが、本作のジョーカーはそういったものではなく、簡単に言えばデッキを強化する装備品となっています。Baltaroではジョーカーは全部で150種類も存在し、主に①チップ枚数を強化するもの②倍率を強化するもの③資金力を強化するもの④その他特殊効果持ち の4つに分類されます。
ジョーカーの影響力は非常に大きく、例えば「ハーフジョーカー」というカードは、役を作る際に提出したカードが3枚以下ならば、倍率に20を加算するというものであり、このカードがあると、本来10枚×2倍のワンペアが10枚×2(+20)倍となり、10倍以上最終スコアが伸びている形になります。
更にジョーカーの中には、数値が可変のものがあり、このタイプは条件を達成すると育成出来るものが多いです。例えば「ウィージョーカー」というカードは、2のカードを含んだ役を成立させる度に、チップ枚数+8を得るというものであり、初期値が0な代わりに、条件を達成するたびに8ずつ伸びていくものになっています。一部のカードは特定タイミングでこの強化値がリセットされたりしますが、大半のカードは永続で強化されるため、序盤からコツコツ育成して数値を伸ばしていく事が可能になっています。
つまりジョーカーは、その時々のプレイ方針に関わるような存在になっており、更に複数枚合わせて所持する事が可能なため、組み合わせを考えてコンボを作るといった事も可能になっています。
↑特定の値を参照してスコアに加算したり、条件達成で永続的に強化されるカードがあったり
金策に使えるカードがあったり、ゲームのルールそのものを改変するカードがあったり
ジョーカーカードの種類は実に様々となっている。
↑ジョーカーは基本的に最後に加算されるので影響力が大きい
動画の場合、左のジョーカーはワンペアを含む役ならチップ+50
右のジョーカーはトリプルを含む役なら倍率に+12される効果がある
※本来のスコアは180だが、ジョーカーの効果で1650にまで増えている
Ⅲその他強化要素
ショップではジョーカー以外にも強化出来る要素があり、例えば役を強化する惑星カードや、トランプカードなどを強化出来るタロットカードなどが挙げられます。
惑星カードは、役毎に個別で強化出来るようになっており、例えばワンペアはすい星のカードで強化出来るのですが、初期値が10枚×2倍なのに対し、すい星のカードを1枚使うごとに、25枚×3倍、40枚×4倍、55枚×5倍と少しずつ強化されていく事になります。こちらも難しい役ほど1回辺りの強化率は大きいため、堅実に作り易い役を強化するのか、それとも浪漫を求めて難しい役の倍率を強化するのか、はたまたジョーカーの条件発動に指定されている役を強化するのか、その時々に合わせて選択していく形になります。
一方でタロットはトランプカードそのものに介入する強化効果をもった物が多いです。トランプカードに直接倍率強化効果やチップ枚数増加強化効果を付与出来るため、ジョーカーのように常に強化効果を受ける事は出来ないものの、確実にデッキを今日か出来る要素になっています。
さらにタロットカードは、トランプカードを破壊したり、トランプの数字や絵柄を変更したりといった事も出来るため、例えば数字や絵柄を特定のものに偏らせて、同じ絵柄かつ連続した数字の並びで成立するストレートフラッシュを狙い易くしたりといった芸当も可能になっています。
この他にもショップで行える強化要素は様々あり、これらを組み合わせて、最終スコアを強化したり、ショップで使うお金の確保能力を強化したりといった事が可能になっています。
なおショップは、入店時点で購入できるものがランダムに決定されるため、手持ちのお金と相談しながら、その時々で臨機応変に対応する必要があるのが本作のローグライク要素の中心点となっています。
↑ジョーカー以外にもデッキを強化出来る要素は様々あり、これらを駆使してスコアを盛って行く
↑デッキに入れるトランプのカードそのものを強化する事も可能
こちらは強化効果そのものはジョーカーより控えめになっているが、
最大三種類まで強化効果を付与出来る
Ⅳ.ボス
本作では最終スコアを達成してショップで購入する一連の動きをブラインドといい、3ブラインドをクリアすると、目標スコアが大きく強化されるようになっています。この3ブラインドの層を本作では1アンティという単位で管理されており、全部で8アンティを達成するとゲームクリアという形になっているのですが、1アンティ毎にラストの戦いは所謂ボス戦となっており、ランダムで特殊ルールが追加されるようになっています。
これがかなり曲者で、特殊ルールは基本的に縛りを化すものとなっているので、特殊ルールに備えてある程度広く対応出来るように、強化要素を積み上げていく必要があります。例えば【窓】というルールでは、ダイヤのカードに付与された強化効果が無効化されるというものであり、デッキ構築をダイヤに寄せていた場合、高確率で機能不全に陥ってしまいます。
この他にも【目】というルールでは、二度同じ役を作っても加算されないため、様々な役を作れるようにしておく必要がある一方で、【口】というルールでは、最初に作った役でしかスコアが加算されなかったりなど、真逆のルールも存在するため、かなり振り回されやすい所もあります。
一応アンティに応じて出現するルールの傾向性が決まっているため、突然無理難題が課される事はありませんし、ショップの強化要素の内容次第では、お金を払う事でルールをリロールしたりする事も出来るようになるため、序盤のアンティに備えたデッキ構築を行った後に、中盤以降はデッキの内容を偏らせてたりなど、プレイングでも最低限の対策は出来るようになっていますが、基本的にはこのボースルールに振り回されながらも遊ぶゲームになっています。
↑ボス戦の縛りは全部で30種類存在し、効果も様々
画像ならフリントなど、スコアに影響が及ぶものがかなり重い
良い所・オススメな点
①基本ルールが簡単で取っつきやすい
ルール解説の欄で色々と書きましたが、結局の所はポーカーなので、ローグライクのゲームとしては雰囲気でも取っ付き易いゲームになっています。一般的なローグライクカードゲームに比べると、敵の存在がない分、今の手札(デッキ)でどの程度のスコアを出せるかも予測しやすいため、ゲームオーバー二なった際に、なぜ駄目だったのかの理由も把握しやすいです。このため過度な運要素に振り回されたくないプレイヤーには特にオススメしやすいゲームになっています。
しいて言うなら、トランプゲーム専用の用語が、特に解説もなく使われていたりするので、トランプゲームにあまり馴染みがないと、ここら辺は自力で確認する必要があるかもしれませんが、これ自体も本当に簡単な用語なので、そこまでハードルを上げる要因にはなっていません。
例)Balatroで使われている用語について
ランク:トランプの数字の事
スーツ:トランプの絵柄の事
フェイス:K、Q、Jの絵柄のある数字のカードの事
ポーカーハンド:役の事
ファーストハンド: 最初のターンに提出された役の事
○○がスコアされた時に:役を成立させるために○○が使用された時に~という意味。baltaroでは手札交換も兼ねて役に関係ないカードも合わせて提出出来るが、この場合役に関係するカードだけが計算されて(スコアされて)、役に関係ないカードは計算されない。
②無数にあるカードの組み合わせ
ローグライクカードゲームの醍醐味である強化要素を組み合わせて、強力なコンボを作る楽しみというのは本作にもしっかり存在します。他のローグライクカードゲームでは、デッキを構成するカードそのもののコンボを考える事が多いですが、Balatroの場合は、ジョーカーカードの効果を発動させるための条件を満たすためにデッキ構築を考える傾向が強く、ある種の装備品であるジョーカーカード間のシナジーに注力するようなゲーム性になっています。
このジョーカーカードは150種類あるだけあって、効果も様々なので、この中から自分だけの組み合わせを見つける楽しみが、ウェイトとしては非常に大きいです。
例として、画像は筆者が実際に遊んでいた際に面白かったコンボの1つ。ハイカーは役を作った際に、役に選出されたカードにチップ+5を付与するというものであり、これにブループリントを添えると効果が実質的に二倍の+10になる。Balatroでは2のカードだとチップが+2枚され、A(エース・1)だとチップが+11枚されるため、実質的に2の価値をA並みに大幅に強化出来る育成コンボになっている。
そしてスプラッシュは、役が成立していなくても、プレイしたカードを全てスコアに加算するという効果である。例えばワンペアが成立した状態でカードを5枚プレイした場合、ワンペアに使った2枚がスコアに加算され、残りの3枚は完全に無視されるのだが、スプラッシュがあるとこの残りの3枚も加算されるというものである。
ハイカーの強化効果は、スコアに加算されたカードしか強化出来ないため、スプラッシュと組み合わせる事で、毎ターン5枚のカードにチップ+10の効果を付与するのがこの3枚のコンボとなっており、カードをプレイすればするほどデッキが大幅に強化されていくのが個人的にこのコンボの楽しいポイントとなった。
↑実際に上記コンボを使った時の動画。
本来はAのワンペアしか成立してないが、スプラッシュで5枚全部加算
そしてスコアに加算される事で、5枚全てにチップ入手+10が付与されている
③任意のタイミングで介入出来る要素が多い
任意のタイミングで介入出来る要素が多いのも特徴的です。例えばタロットカードのうち、【星】というカードは、任意のカードを3枚までダイヤ柄に変更するという効果がありますが、このカードを消耗品として抱えている場合、カードを選択できる状況さえあれば、好きなタイミングで使用できます。
このため、タロットカードを次々確保出来そうな状況なら、すぐに使ってしまっても良いですし、逆に抱えて置いて、任意のタイミングでフラッシュ(同じ柄のカードを5枚揃えた役)を作れるようにしたりといった使い方が可能です。
またジョーカーカードを複数枚抱えている場合、いつでも並び順を変えられるという仕様もあります。ジョーカーカードは左から右の順に効果が適用される関係上、普段は最終的なスコア倍率が高くなるように調整する用途ぐらいでしか使いませんが、【ブループリント】ジョーカーという、右のジョーカーカードの効果をコピーするカードがある場合、最終スコア倍率を盛りたいか、金策をしたいかで、好きなタイミングで何度でもコピー先を変更出来るため、Balatroの中では個人的に一番面白いジョーカーカードとなっています。
このように好きなタイミングで強化アイテムを切ったり出来る要素がある事は、他のローグライクカードゲームとの差別化点になっているように感じました。
↑個人的に特に面白いと思うジョーカー3選
コピー効果は位置を調整する事で、毎ターンコピー先を変えられる。
④シード値や全開放モードがある
本作にはシード値があり、プレイに再現性があります。シード値からゲームを始めた場合、アンロック要素が無効化されるため、ゲームの攻略に利用する事は出来ませんが、デッキの内容が好みだった場合に、全く同じ内容でプレイ出来る他、他人のプレイを見ていて面白そうなデッキがあったら、その人がシード値を公開していれば、自分も追体験するといった使い方も出来ます。
また本作は基本的に、プレイを重ねれば重ねるほど、新たなジョーカーカードやデッキが解放されていく仕組みになっているのですが、プロフィール欄から、これらの解放要素が最初から全開放された状態で遊ぶといった事も可能です。この状態だと実績の解除が不可能になるため、そういった要素を求めるプレイヤーにはオススメ出来ませんが、この手の解放要素が煩わしい人でも、オススメ出来るものになっています。
↑実績が無効化されるが、全てをアンロックも搭載
気になる点・注意点
①高難易度モードやエンドレスモードはオマケより
本作では様々な縛りを追加していく高難易度モードや、クリアしたデッキを使って更に深層を目指して走れるエンドレスモードがあるのですが、これらのモードは専用の構築が求められ、Balatroが持っている様々なカードを組み合わせる楽しさが活きにくくなってしまうので、やり込み要素というよりも、あくまでオマケモード寄りであるように感じました。
特にエンドレスモードは、クリアまで持って行ったデッキを更に強化して腕試し出来るという点が良さそうに見えますが、実際には要求される最終スコアのインフレ具合が指数関数的に上昇してしまうため、事前にエンドレスモード用の構築を作れていないとすぐに終わってしまうため、オマケ感が強いモードとなっています。
一応挑戦系のコンテンツの中でも、チャレンジモードだけは、特定のコンセプトに最初から特化させた状態で遊べるゲームモードとなっており、普段は出来ないようなプレイが出来るモードになっていたので、このモードだけは、広く人にお勧めし易いよう感じました。
↑各アンティ毎の目標スコア。8~10以降がエンドレスモードのスコアに(難易度で変化)
9から10が5倍、10から11が12倍、11から12が41倍、12から13が156倍と、
エンドレスモードに突入した瞬間スコアの増加率が異常な事になっている
②カード間バランスが取れているわけではない
ジョーカーカードなど、スコアを強化するカードに関しては、カードの強さにはかなりの開きがあり、高レアなカードほど効果が強力になっているのは勿論そうなのですが、同じレア度内でも、パワーにかなり開きがあるような状態になっています。
序盤向けの強化カードや、金策向けのカードなど、用途がハッキリとしている分にはまだ良いのですが、中には育てればそれ1枚だけでスコアを数十~百数倍に強化出来る超パワーカードもあれば、条件の割に成長率が渋かったり、見返りがしょっぱいカードもあり、所謂ハズレ枠に当たるようなカードもそれなりにある状態になっています。
このためパワカを引ければそれだけでもうプレイが大味になる事もありますし、一方でショボい倍率をやりくりしながら何とかギリギリを生きていくようなプレイ内容になる時もあるので、プレイ内容そのものをある程度安定させたいならば、序盤からリセマラを繰り返す必要があり、この点は少し好みがわかれそうなポイントです。
おわりに
以上がBalatroのレビュー記事になっております。値段も取っつきやすさもお手軽でありながら、工夫のしどころの多いゲーム性が本作最大の特徴であり、この敷居の低さとゲーム性の深さの両立こそが、TGA2024にノミネートされた原動力になったのではなかろうかと感じるようなゲームになっておりました。
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